合気道大阪研究会の研究報告

合気道は生き方である

「武道は技術ではない。生き方である。」と大先生(植芝盛平翁)は仰った。 多田先生の稽古中のお話の中にそんな言葉が幾度か出てきました。私、自身も十年以上合気道の稽古を行ってきましたが、その時間を振り返ると実に人生(生き方)に「合気道」が大きく影響してきたことが伺えます。

はじめるきっかけは「強くなりたい」「運動不足解消」など様々ですが、合気道という武道は、続けて稽古していくと知らず知らずのうちに人生に良い影響を与えてくれるような気がします。

特に多田塾の合気道は、大先生の合気道の核となる部分を中村天風先生の呼吸法というアイテムを使って、より体感的に具体的に手解かれたものであると強く感じます。大阪研究会では、それを人生に生かすため、より現代的科学的な切り口で紐解いていけたらと考えております。

なぜ試合がないのか

合気会には試合がありませんが、合気道には試合形式のものも存在します。そもそもなぜ試合がないのか。それは、試合を続ければ続けるほど「執着の心」が身につきやすいからです。執着は、相手にとらわれた状態であり、自分の心つまり脳の自由を奪われた状態です。どんなに肉体を鍛え上げても、最終的にその肉体を動かしているのは脳と心です。どんなに体の調子が良くても、心が病んでいれば思い通りに動きません。そこで真の自らの能力・脳力を引き出す「集中」の状態を修行するためには、どのような稽古をすればよいかということを植芝盛平翁が探求し続けた結果、たどりついたのが「気の流れの錬磨」という稽古法であると聞いております。多田先生も「合気道を試合化することは、武道を100年後退させることになる」と仰っていました。もちろん、試合形式が駄目なものということではありません。全く別ものであるという事です。ただ先人が残してくれた自らを磨き高める素晴らしいメソッドが多田先生の合気道には秘められていると感じます。

上達するためには教わり上手になる

どのような習い事も同じ。上達が早い人は問題をいち早く解決しようとします。わからないことをわからないままにしておくと、合気道をあらしめる法則のようなものを感じることがなかなかできません。稽古を行うときに注意したいことを以下に挙げさせていただきます。

・師範の教えを必ず守る!
 当たり前ですが、師範がその時行っている「足さばき、体さばき、手さばき、目付け、間合い」など、自分の動きが指示どうりであるかを常に自分で確認しながら稽古してください。

・技はその日のうちに覚えるくらいで!
 実際に体を動かしたあとは、必ず復習してください。実際に体を動かせない時も電車の中などで「今日は両手の四方投と小手返をしたなぁ~手の持たせ方は…今日覚えたポイントは…」というように思い出し、連想行を行うことで次に稽古するとき大きく変わってきます。

・その日に習得するポイントを決めておく!
 師範の技を全て覚えて帰ることはできません。自分のテーマを決め、「今日は足さばきを見よう」というように部分的にしっかりと、師範の技を見ることで頭の中で技が整理しやすくなります。

私は力の結晶だ!そして、未熟だ!

さらに上達していくためには、自らの内なる積極的な力と一歩引いて外から観察し、補正していくこと。つまり、内から自らを膨らまし、外から整形することが必要であると感じます。内から高めるためには、呼吸法でしっかりと力を練り体と心を創ること。白帯であっても「自ら場を主催する稽古」を行うこと。稽古を重ねて自信をつけること。などが大切です。しかし、決して調子に乗らず常に顧みる姿勢「脚下照顧(自らの足元をよく見る)」が必要です。

稽古で行うは格闘術にあらず

合気道の稽古で行う技は一見、「こう攻撃された場合…こうかわして…」と護身術のように誤解しがちですが、合気道多田塾で行っているのは、組手でも型でもなく「気の流れの練磨」という稽古法です。お互いが刀や砥石になって、技を在らしめている気の流れを練りこむ稽古です。もし格闘術や護身術として使うのであれば、形が変化します。しかし、気の流れがわかればいかようにでも変化させることができるようになります。目の前にいる敵と取っ組み合うのではなく、力をプラスに活かし、技を造りあげるような稽古を心がけてください。

すべては四方投と一教にあり

合気道の技は、掛かり方や捌きなど変化を合わせると実に数千種類と言われます。すべての技を記憶することはおろか、1回ずつやってみることすら大変なことです。しかし、合気道を作り上げる法則を体で覚えてしまえばいかなる新しい技にも対応でき、自らがやったことのない技も湧いてくるようにもなります。多田先生は四方投と一教を見れば、その人の技がすぐわかるとおっしゃいます。私も同じように感じます。基本的な技を自然に正しく行うことができるように、師範の細かな指示をしっかり聞き、1つ1つ正しい所作を身につけて、合気道のエッセンスを体得してください。

足さばきをはじめに覚える

まずはじめに「足さばき」つまり、技をかける時の足の動きをよく見て覚えてください。特に少し動きに慣れてきた四級~初段くらいまでの間にどれだけ、はっきり明確に足を動かして稽古するかは大きなポイントです。転換の時、まっすぐ足を踏み込んでいるか?しっかり180°転換できているか?どの位置まで足を動かすか?など、できるだけ腰を落とし、大きくはっきりと指導通りに足を動かせているかをよくよく確認してください。

待ったをしない

本当に初心の時はまた別ですが、白帯であろうと黒帯であろうと技をやり始めたら、絶対に「待ったをしない稽古」をしてください。「右で来ると思ったら、左で来た!」そんな時もできるだけ流れを切らないように技をかけます。もし、入身投なのに四方投をかけ始めてしまった…と技を間違っても、やりきります。我々の稽古は、気の流れ錬磨ですからはじまった流れは切らずにやりきってください。すると、いつしか不意な動きにも、体が反応して適切な技をかけられるようになります。

怪我をしないさせない

無駄な力みがなく、すみずみまで気が通れば、怪我もせず、怪我もさせない稽古ができるようになりますが、どうしても力が入ってしまうことがあります。特に男性は、力強さを求めてしまいがちですが、速く、強くやればそれだけ気の流れも感じれなくなり、稽古になりません。相手の技量を感じ取り、適切な速さ力加減を心がけ、受けと取りが一体になるような稽古を目指してください。

回数だけでは上達できない

合気道の上達には、技の取りや受けをもちろん何百回何千回と回数を重ねる必要があります。しかし、あるとき多田先生は「回数だけじゃ上手くならないよ」と仰いました。自分が自分で「上手くなった!」と思うことが壁を越えるためには必要だと言うのです。昇級昇段の捉え方には、2種類あります。1つは「稽古日数を重ねて、技を習得しました。」というように、技量があると認められたからその級段を貰えたという考え方。もう一つは、その級段になってしまったからには…と級段に背中を押される考え方。私は、合気道においては後者の比率が大きいように感じます。初段の技量のものが初段を名乗るというより、初段という段位がその人物を育て作り上げると思います。多田先生の審査は、ゴールではなく次へのスタートのように感じます。稽古を重ね、上手くなったと実感をもつことが大切です。

早めに木剣と杖を手にする

私は、四級のときから杖と木剣の型をやりはじめました。合気道の稽古をしていると「杖や木剣なんて、黒帯になってから…」と考えがちです。しかし、私の経験上、黒帯になってからやりはじめるのは遅いと感じます。合気道の動きは、剣術と槍術の動きが元になっています。白帯から杖や木剣を振っていると、体術だけよりも体の動きにメリハリがつき、技のキレも良くなります。初心の頃にきっちりと体や姿勢の基礎を作り上げるためにも早めに木剣と杖を手にして、振ってみることを私はお勧めいたします。

自らの安定が一番

稽古を一生懸命やっているとどうしても技をしっかり掛ける事に執着してしまいがちになります。もちろん技がしっかりと掛かることは大切ですが、多田先生は「いかなるときも常に自らの体の安定が一番だ」と仰いました。確かに多田先生の技をよく観察すると技のかけ始めから終わりまで、さらに技と技の間も常に姿勢良く体が安定しており、連続写真を撮るとどの瞬間も絵になっています。 この境地を目指すにあたって、私はまず一人稽古がとても大切であると思います。一人で動きふらつくようでは、稽古で相手にしっかりと技は掛かりません。一人稽古でしっかりと入身、転換から四方投表裏、入身投、一教など安定して動けるように稽古することで連想行も同時に行われ、上達への近道になります。稽古がない日も、指先足先までしっかりと気を通し、姿勢良く動けるように一人稽古をしっかり行ってください。

いかなる時も肛門がしまっている

「安定が一番」につながりますが、なるべく足幅は広く、腰をしっかり落としたままで動き、上体はゆったりまっすぐ立っている。そして、常に肛門がしまっている状態であること。もし技をかけている時やかけられているときにふらつくようであれば、自分で肛門をしめることを意識してください。余計なところに力を入れずに、肛門だけをしめる感覚はクンバハカによって体感してください。普段歩いている時もお尻が後ろに出ずに、腰がしっかり立っている感じです。私のイメージでは、頭のてっぺんを糸で引っ張られるようにまっすぐ立ち、腰からまっすぐ前に歩く感じです。

先の先

多田先生は「相手と触れた時には、技の8割は完成していなければならない」と仰います。体の面においては、触れた瞬間には相手の前にはいない!そして、触れる前から技が描けている!その技の線の閃きが大切です。自ら気力を持って迫り、相手に「打たせる」「持たせる」という先に場を作り主宰する「先の先」を心がけて稽古してください。